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JTの子会社がロシアに戦闘機100機分の貢献? たばこ事業で多額の納税 ウクライナ「戦争支援企業だ」

2024年2月11日 12時00分

 ロシアによるウクライナへの侵攻開始から間もなく2年を迎える。先進7カ国(G7)がロシアへの経済制裁を強めるのに歩調を合わせ、多くの外国企業が「脱ロシア」に踏み切った。一方で事業を継続する企業は少なくなく、ロシアに多額の納税をしている日本たばこ産業(JT)の子会社は、ウクライナ政府から名指しで批判された。日本企業とロシアの関係はどうなっているのか。(岸本拓也)

◆JTインターナショナル(JTI)とDMG森精機の子会社が

2023年12月、ワシントンの米連邦議会議事堂を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領(中央)=AP

 「JTIの(2020年度の)収益のうち36億ドル(当時の為替レートで約4000億円)が直接ロシアの国家予算に入った。これは、ほぼ毎日ウクライナの都市を恐怖に陥れているミサイルを搭載したロシア戦闘機100機の費用に相当する」
 2023年8月、ウクライナ国家汚職防止庁は、ロシアで事業を続けているJTの海外会社JTインターナショナル(JTI)を「戦争支援企業」のリストに加え、声明で強く非難した。
 ウクライナ政府は、ロシアで事業を続け、納税などを通じて侵攻を支えているとみなした外国企業を「戦争支援企業」として名指しし、ロシアでの事業の停止や撤退を迫っている。これまでに中国や米国企業を中心に約50社が指定され、日系企業では、JTIが初めてリスト入りした。9月には工作機械メーカーのDMG森精機の子会社も指定された。

◆「最大の投資家で主要な納税者だ」

 声明などによると、スイスに拠点を置くJTIは、ロシア国内でメビウスやキャメルなどのブランドを展開し、22年のたばこ市場のシェア(占有率)は首位の36.6%を占める。過去20年間でロシアへの投資額は46億ドル(約6700億円)を超え、20年度の納税額はロシアの国家歳入の約1.4%に上ると指摘し、ウクライナ政府は「最大の投資家で主要な納税者だ」と批判した。

モスクワ中心部でたばこを吸う市民ら。ロシアでのJTのシェアはトップだ=2018年(栗田晃撮影)

 JTIは侵攻後の2022年3月、ロシア市場への新規投資やマーケティング活動を停止すると発表したが、ロシア国内4工場での生産や現地での販売は継続している。約4000人の雇用も維持し、その売上高はロシア国内でビジネスをする外資企業の中でトップクラスだ。
 JTの広報担当者は「こちら特報部」の取材に、2020年度のロシアへの納税額が約4000億円だったことを認めた上で、「国内外におけるあらゆる制裁措置や規制を順守した上で事業運営を継続している」と説明。ロシア事業の今後については22年4月に「グループ経営からの分離を含めた選択肢の検討を行っている」と表明したが、今も具体策は決まっていないという。

◆ロシア事業は「ドル箱」だから? 大株主の日本政府は

 簡単に撤退できないのは、JTにとってロシア事業がグループ全体の営業利益の2割超を稼ぐ「ドル箱」である点が大きいとみられる。しかし、ウクライナ支援の姿勢を鮮明にする日本を含めた西側の主要国がロシアへの経済制裁に踏み切る中、それに逆行するようなJTの姿勢について、国会では批判も出ている。

鈴木俊一財務相

 日本維新の会の松沢成文参院議員は外交防衛委員会などで、日本政府がJTの株式の3分の1を所有する特殊会社であることを引き合いに、「監督権限を持つ日本政府がJTをロシア事業から撤退させるべきだ」と批判。1月にも記者会見を開き、「政府が撤退を指示しなければ、日本は『戦争支援国家』と国際的に非難されかねない」と改めて強調した。
 ただ、鈴木俊一財務相は「JTは現状、国内外の制裁措置を順守している」とし、ロシア事業の撤退判断は「民間株主が3分の2を占める上場企業として、自主的に対応していくべきもの」と述べ、政府として関与しない考えを示した。

◆実は企業の「脱ロシア」は少ない

 ロシアによるウクライナ侵攻後、多くの外国企業がロシアから撤退している。