強姦(ごうかん)罪などで懲役12年の判決が確定して服役中、被害証言がうそだったとして釈放された70歳代男性の再審判決で、大阪地裁は16日、無罪を言い渡した。
芦高(あしたか)源(みなもと)裁判長は「被害はなかったとする女性の新しい証言は信用できる」と述べた。無罪を求めていた大阪地検は控訴しないことを決め、即日、上訴権を放棄。男性の無罪が確定した。
男性は、冤罪(えんざい)を見逃した捜査などの問題点を明らかにしたいとして、国などに国家賠償を求め、年内にも提訴する方針。
判決によると、男性は2004年と08年に当時10歳代の同じ女性に性的暴行を加えたなどとして08年に逮捕、起訴された。一貫して否認したが、女性の証言などから09年に大阪地裁で懲役12年の判決を受け、11年に最高裁で確定。服役中の14年、この女性や目撃者とされた女性の兄が証言をうそと認め、再審請求した。
芦高裁判長は判決で、被害証言の信用性を検討。捜査段階から被害時期などに不自然で不合理な変遷があり、再審請求後の地検の捜査で見つかった「性的被害の痕跡がない」とする診療記録とも矛盾すると指摘した。女性がうそを証言したのは母親に執拗(しつよう)に問い詰められたからだとし、被害を否定した新たな証言は合理的で信用できるとした。
男性の勾留と服役は昨年11月の釈放まで約6年に及び、芦高裁判長は判決言い渡し後、「身に覚えのない罪で長期間自由を奪い、計り知れない苦痛を与え、誠に残念。一人の刑事裁判官として被告の言葉に真摯(しんし)に耳を傾け、審理を尽くしていきたい」と述べた。