「百科」には計1085本の論文を引用。植物だけでも172種類。内藤氏は「個別のケースで因果関係を証明するのは不可能に近いが、多くの論文を検討することによって因果関係の確かさが見えてくる」という。論文の分析から、健康食品を取る際に注意すべき10項目を挙げる。
肝硬変で通院し、症状が安定していた女性は、粉末のウコンを毎日スプーン1杯飲み始めて2週間後に症状が悪化、3カ月後に死亡した。自宅付近で採ったドクダミをせんじて毎日お茶代わりに飲み、重症の皮膚病になった男性もいた。ドクダミを分析すると、光線に対する過敏症を起こす物質が含まれていた。こうした論文から内藤氏は「天然、自然のものだから安全と思い込むのは間違い」と指摘する。
長年にわたって親しまれてきた飲食物でも、特定の成分を抽出した錠剤や添加物が原因となった被害がある。「食べ方、飲み方には、それぞれ細かいしきたりがある。本来は根だけを使っていたのに、葉などほかの部分が混ざる製法を取り入れるなど、伝統を無視した方法では全く違うものになるからではないか」
「健康食品は偏って、長期間、大量に取ると被害につながる」と強調。漢方薬に鉛が含まれていたなど表示されていないものが入っている可能性があったり、テレビ番組で紹介されたもので視聴者が下痢をしたことがあったりしたように、うのみは危険とも指摘する。
健康食品やサプリメントのうち、内藤氏が必要量、有効性、安全性についての科学的根拠があるとするのは、12種類のビタミンと5種類のミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅)の「栄養機能食品」だけ。比較的安全と思われがちな漢方薬は「効き目が穏やかだが、副作用も長期間ゆっくり出ることに注意が必要」という。
「健康食品は、バランスの取れた健全な食生活に代わるものではない。副作用は誰にでも起きる可能性があり、理解した上で慎重に取るべきだ」と内藤氏は話す。
【写真説明】健康食品の注意点